頼 三樹三郎 らい みきさぶろう
   

求友平生如戀酒
酒也易致難違友
烏從快友持車螯
一棹浮遊酒船酒
廬峰来贈大湖瓢
殷紅古色如蒲萄
不嫌充酒不容斗
芳烈中含氣冲霄
聞道大湖磊落士
江山鍾秀鑄其髄
文壇抽幟本優爲
獨疑混跡巫醫裡
一掃千箋珠玉落
婉辞険語有餘綽
流鶯啼雨花侵簾
老鶚盤空風起漠
我欲訪之乗桂舟
倒瓢同醉竹生洲
矯首京城萬家底
身在紅塵心已悠
一醉涼窓瓢代枕
雲月琶湖夢澹々
庚戌秋仲
竹渓山本君粲正    鴨漉鰹
平生 友を求めること 酒を恋するが如し
酒は易く致(する)のと違い 友は難し
烏は快友を従え 車螯(=おおはまぐり)を持つ
一棹を浮遊す 酒船(=酒を貯蔵するための木製の大きな入れ物)の酒
廬峰(風光明媚な避暑地) 来り贈す 大湖(=琵琶湖)の瓢
殷紅(=黒みがかった赤色)の古色 蒲萄の如し
酒を充たすを嫌わず 斗(=升)を容さず
芳烈(=強い香気) 中に含み 気は冲霄(=空に昇る)
聞道(=聞くところによれば)大湖は磊落(=快活で、小さなことにこだわらない)の士(=男)
江山(=山川)の鍾(=鐘) 秀いで 其の髄を鑄(い)
文壇 幟を抽(ぬきん)でて 本に優爲(=力に余裕がある)
独り巫医(=医者)の混跡(=跡をごまかす)を疑う
千箋を一掃し 珠玉(=すぐれているもの、美しいもの)落ちる
婉辞(=遠回しにいう言葉)険語(=人を驚かすようなむずかしい話や議論) 餘綽(=ゆとり)有り
鶯啼 流れ 雨花 簾を侵す
老鶚(みさご=鷹に近い鳥) 空を盤(=ぐるぐる回る) 風 漠(すなはら)に起こる
我 之(ここ)を訪れんと欲し 桂舟(=美しい舟)に乗る
瓢を倒して同醉す 竹生の洲
京城(=皇居)に首を矯(=曲げる)めるは 万家のこと
身は紅塵(=世間のわずらわしさ)に在るも 心は已でに悠(=はるか)なり
一醉の涼窓 瓢 枕に代わり
雲月の琶湖(=琵琶湖) 夢 澹々(=心が静かで動揺しない)たり
 庚戌(=嘉永3年(1850))秋仲
 竹渓山本君粲正    鴨漉鰹
p×p

文政8年5月26日(1825年7月11日)生〜安政6年10月7日(1859年11月1日)歿
制作年 嘉永3年(1850) 26歳
 幕末の志士・儒者。京都三本木の生。頼山陽の三男。名は惟醇・醇、字は叔厚・子厚・小春・士春、通称は三木八・三木三郎・三樹三郎・三木八郎・三樹八郎あるいは三樹、号は鴨香E百城・古狂生。
 後藤松陰・篠崎小竹・佐藤一斎・梁川星巌らに学ぶ。安政4年(1858)には将軍後継者争いが勃発すると、尊王攘夷推進と徳川慶喜(一橋慶喜)擁立を求めて朝廷に働きかけたため、大老の井伊直弼から梅田雲浜・梁川星巌・池内大学と並ぶ危険人物の一人と見なされた。同年、幕府による安政の大獄で捕らえられ、斬首された。
  「鴨漉鰹」の下に、朱文下駄判の「頼醇」の落款印が押されている。

推奨サイト
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%BC%E4%B8%89%E6%A8%B9%E4%B8%89%E9%83%8E
http://wp1.fuchu.jp/~sei-dou/jinmeiroku/rai-mikisaburou/rai-mikisaburou.htm
https://kotobank.jp/word/%E9%A0%BC%E4%B8%89%E6%A8%B9%E4%B8%89%E9%83%8E-17894


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